食品分析に関して知っておきたい比重のこと

食品に確かに目的の成分が想定された量だけ含まれているか、規格に合っているか、異物などが含まれていないかなどといったことを判断するために食品分析がよく行われています。その項目の一つとして比重がありますが、あまり利用したことがない人もいるでしょう。

どんなときに使われるものでどのくらいの費用がかかるのかを確認しておきましょう。

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近年の食品分析では比重測定をしないことも多い

外部に依頼して食品の品質保証をしようというのが近年の食品分析における一般的な考え方で、安全に食べられるものであることや、規格に合っているものであることを示す手段として活用されています。特に食品の安全性について関心を持つ人が増えてきている影響で、特に法律によって義務付けられていない場合でも細かな分析を依頼して品質保証をしているケースは少なくありません。

例えば、放射性核種が含まれているかどうかを検査したり、異物が含まれていないかを確認したり、微生物による汚染のリスクがないかを調べたりしているケースがよくあります。規格を満たしているかを確認する目的でも食品分析はよく活用されています。

食品添加物が成分規格に合っているか、遺伝子組換え体が使われていないか、清涼飲料水の規格に従っているかなどといったものが代表的です。アレルゲンが含まれていないか、有害物質が検出されないかなどといったように成分の有無や量を判断する分析が主流になっているため、比重測定は特に必要がないケースも多いのが現状です。

ただ、場合によっては比重測定が必要になるので内容を理解しておくのは肝心です。

比重測定は規格に合っているかを判断するためのもの

食品分析における比重測定は基本的には規格に適合しているかどうかを見極めるための試験です。このくらいの比重のはずなのに結果を見ると比重がかなり重くなっているという場合には何らかの夾雑物が入っていると考えざるを得ないでしょう。

逆に比重がかなり軽いという場合にも純度や成分に問題があることは否めません。比重測定は液体の食品や食品から抽出された液体に対して行われるのが基本です。専用の機器を用いると簡単に測定できるので、業者によっては標準分析項目に含められていて比重のデータを結果に載せてくれることもあります。

よく用いられる食品の例

食品分析を外注するときに比重測定を依頼するのが一般的な食品は主に二つあります。一つ目は飲用乳で、販売するために必要な規格として挙げられている6つの項目の中に含まれています。6つの規格とは比重、酸度、無脂乳固形分、乳脂肪分、細菌数、大腸菌群で、無脂乳固形分や乳脂肪分については消費者が気にかけることが多いのでパッケージに記載されている項目です。

比重についても書いてある牛乳もありますが、牛乳を出した牛の体調や生育度合い、食事の様子などによっても変化するので明記しないか幅を設けて記載されている傾向があります。一般的には6項目を全て分析してもらうのでパッケージ化されているのが通例です。

二つ目は油脂で、油の種類によって比重が異なることから検定目的で分析が行われています。菜種油、ごま油、オリーブオイルなどの様々な種類の油脂がありますが、由来になっている植物によって含有している脂質や脂肪酸の種類や比率に違いがあるので比重にはかなりの差が生じます。

比重が合っていることで確かにその種類の油脂だと示せるようにすると共に、純度についての保証もできるのが特徴です。この他にもシロップやソースなどでも比重を分析しているケースはありますが、あまり一般的ではなくなりました。

規格に合格することや純度を示すのに必要ではないからで、研究開発の時点で分析が必要になったときに外注するという程度になっています。

比重測定の方法は複数ある

比重はどのように測定しているのかと気になる人もいるでしょう。定義的に考えれば対象となる食品の重さと体積を正確に測定して割り算をすれば比重がわかります。ただ、一つ一つの食品を手作業で体積と重さを測っていくのは時間も労力もかかることは否めません。

そのため、簡単に計測するための方法が開発されてきました。いくつもの方法と、その方法に対応した機器が生まれてきたため簡単に測定し、他の方法を用いたダブルチェックもできるのが現状です。食品分析で用いられる代表的な比重測定の方法として比重瓶法と振動式密度計法があります。

比重瓶法は比重瓶あるいはピクノメーターと呼ばれる容器にサンプルを入れて測定をする方法で、比較的昔から利用されていて汎用性が高いのが特徴です。振動式密度計法は振動式密度計という計測機械を使用する方法で、U字になった管の中に入れたときの振動の周波数から密度を計算できる仕組みになっています。

この他にもバネ秤を使う方法などの古典的な方法もあれば、水分測定器と一緒になった密度測定器を使った測定方法もあります。外注するときには方法を指定できる場合もあるので違いを理解しておくと参考になるでしょう。

分析に必要な料金相場

一般的には食品分析に出すと安くても5000円程度、高い場合には一項目だけでも10万円近くかかってしまいます。一般的には1万円から2万円程度での検査が多くなっていますが、比重測定にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか。

業者による違いはあるものの、比重だけを分析項目として依頼した場合には2000円から5000円くらいというのが相場になっています。HPLCなどの高額費用がかかり、測定に長時間を要する分析項目に比べると比重測定は短時間でほとんどコストをかけずに行えることから相場はかなり低めなのです。

飲用乳の規格検査のようにパッケージ化されている場合でも比重が費用を引き上げてしまっていることはあまりありません。ただ、比重測定の方法によっては外注するときにかかる費用がもう少し高くなってしまうことがあります。

振動式密度計法であればかなり短時間で人件費もほとんどかけることなく測定できますが、比重瓶法の場合にはやや時間がかかるので人件費負担が大きくなることは否めません。比重瓶法で対応している業者の場合には5000円以上になっているのが一般的で、納期もやや長めになるのが通例です。

どんな設備が整っているかで費用や納期が変わることを念頭に置いて、比重測定を依頼するときには業者を選定するようにしましょう。

参考⇒食品分析:https://www.nouyaku-bunseki.net/